悲しい場面で泣けないんです。

人の死に対して泣けないんです。

特に死に対する凄い経験もトラウマも思い浮かばないし、普通に祖父母の臨終も病院で看取ったのですが、世話になった友達の母親が急死した時も愛犬が死んだ時も皆がおいおい泣いてる時に「あ～、泣かなきゃな～。こいつ何だよって思われるな～」と面倒臭い気持ちになります。

悲しい＝泣くってならないんですよね。

母親が家で倒れているのを見た時も心配は心配なんですけど「死んだら葬式とか面倒だな」って思いながら、入院した時は仕事も休んで夜もほとんど眠らずに看病して感謝されました。

普通の人間と周りには思われてると思うんですけど、実は自分は人として何か感情に欠陥があるんじゃないかと思ってしまいます。一番怖いのは「欠陥あっても別にいいけど」って思ってしまう自分がいることです。

こんな人、結構います？

【30歳　OL】

ありがとうございます。

「あ～、泣かなきゃな～。こいつ何だよって思われるな～」
「死んだら葬式とか面倒だな」

などのドライな言葉のひとつひとつが素敵です。

さて、人間が泣くのは、水風船が破裂するのに似ています。

水がたまっている。
そんなところに、あらたに水が入ってくる。

その結果、水風船が耐えきれなくなって、中の水が飛び散る。

それこそが、「涙」です。

これ、恐ろしく快感です。
たまっていたストレスや言いたいことを、それを涙として外に放出しているわけです。

ですのであなたの場合、単にストレスや言いたいことがたまっていない可能性が大です。

何ら欠陥などではありませんので心配する必要はありません。

特に「泣く」というのは、どちらかというと男性よりも女性に多いもの。
「ここ最近ぜんぜん泣いたことがない人」というのは、男性の中には結構います。
ですので自分一人だけマイナスに感じる必要はありません。

また、ここで考えてみましょう。

あなたは、ある人の状態が病気かどうか判断する、もっともカンタンな判断材料をご存じでしょうか。
それこそが、「本人や周りの人が、困るかどうか」というもの。

たとえば「つい何度も手を洗ってしまう」人がいたとします。
この人がＯＬをしていて、それこそ仕事の最中に何度も化粧室に立ってしまい、仕事が手につかなくなるなら、それは本人にも周囲にも迷惑な状態になるので「病気」です。

しかしその人が料理人なら、話は違います。
何度も手を洗うことで手が清潔になるなら、食中毒の危険などもなくなり、結果オーライのはず。この場合は、誰も困ることはないので、あえて「病気」とは考えなくていいでしょう。

あなたの場合は、「泣けない」わけですが、これもそうそう困る状態にはならないはず。

お葬式や誰かの死で泣かなくても、「ガマンしているんだ…。気丈な人だ…」
と思われるはずです。それによってあなたの評価が下がることはないでしょう。

また「死ぬと面倒だから看病した」というのもありますが、これも最終的には結果オーライです。

「死なないでぇ～！」みたいに泣き叫びつつ、自分の感情を外に出すことだけに夢中な人よりも、死にそうなご本人にとってはよっぽど役に立つ存在のはずです。

というわけで、まったく心配する必要はありません。
気にせずその道を進んでくださいね。

ちなみに「泣きながら一気に読みました」という推薦文のある小説はありましたが、「泣きながら一気に書きました」という作者コメントのある小説は、いまだかつて見たことはありません。
どれだけ浸っているのか。
とにかく泣きやんでから書いてください。

………。

こんなことをつい妄想しているから小説などに感情移入できない自分に泣きながら、あなたの幸せを心より願っております。

ゆうきゆう（精神科医・心理学者・作家・Ｍ）

特技は、たて笛のテストを口笛でごまかすこと。趣味はバンジージャンプ。落ちるときの情けない顔は天下一品。夢はワイルドブルーヨコハマの跡地を買い取って、セクシーピンクヨコハマにすること。読者数138000人のメルマガ「セクシー心理学」を運営している。アドレスはこちらhttp://sinri.net/

ニンテンドーＤＳから「心理研究家ゆうきゆう監修　マイニチココロビクス　ＤＳセラピー」も発売中。

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