父が私たち家族をだますんです。

私の父についての相談なのですが、いつも私や家族を騙そうとするのをなんとかしたいんです。

例えば、父の、「ちょっと５分だけ待っててくれる？」というのは、実際は30分待つことになります。
この間は、車で新宿から世田谷の自宅まで帰る途中で、「ちょっと、吉祥寺に用があるから寄ってっていい？」と言われ承諾すると、実は目的の場所は小平でした。

父がどこかお祭りや旅行など、「○○に行かない？」と楽しげな感じで誘ってきても、大抵それは父の仕事だったりします。
このように、なんとか巧みに騙して色々なことに付き合わそうとしてくるんです。
別に普通に「付き合って？」と言ってくれれば気持ちよく付き合うんですが…。

うまくかわすというか、そもそもそれをさせないテクニックってないでしょうか？
よろしくお願い致します。

【29歳　会社員】

ご相談ありがとうございました。

お父様の手法。
これを心理学では「ローボール技法」と言います。
まずは低くて打ちやすいボールを投げることで、相手の意識を引きつけます。

その直後で、「やはりそれはナシになりました。ただ、かわりにこっちを…」と言うと、相手は最初に承諾した手前、そっちも妥協してＯＫしてしまう、ということを言います。

ここでは、
「５分⇒１時間」
「吉祥寺⇒小平」
などですね。

しかしお父様は、そこまで意図的に考えているのでしょうか。

思うに、おそらく「不安」な可能性があります。

「いきなり１時間と言ったら、怒られるんじゃないか？」
「突然に仕事だと言ったら、イヤがられるんじゃないか？」

そんな不安から、まずはソフトなことを伝えるわけです。

確信犯というより、結果的にそうなっているだけ、というように思えます。

ある意味、ネズミさんが、人間の様子を見ながら、コソッコソッとチーズをかじるのに似ています。さすがにいきなり全部取るなんて、できないのです。
自分はお父様と同じサイドの人間なので、心からその気持ちが分かります。

ですのでそれをさせない方法は、たった一つ。

普段から、お父様に厳しい態度を取らないことです。

「もう！　５分って言ったじゃない！？」
「吉祥寺って言ったのは誰よ！？」

こんな風に怒れば怒るほど、相手はよりストレスを感じて、次からさらに小さな提案をするはずです。

もっと対応をソフトにしてみましょう。

「大丈夫よ。１時間でも。私、パパのために、待ってるから」
「吉祥寺でいいの？　本当は、パパともっと遠くに行きたいな…」

うん。
雰囲気を出すためにパパにしてみたところ、怪しい雰囲気の方が強まった気がします。

寒気がしたら申し訳ありません。
いずれにしても、このようなソフトな言い方を繰り返せば、相手は嬉しく感じ、気を遣わずに最初から、要求をズバリ言ってくるはずです。

まぁ、そこまでして直すほどのクセなのかは分かりませんけども。

いずれにしても、根底にあるのは、ちょっと弱気な気持ち。
「騙す」なんて大きく考えるのではなく、少しだけ優しく接してあげましょう。

何か少しでも参考になることがあれば幸いです。

ちなみにこのローボール技法をはじめて知ったとき、僕も使ってみることにしました。

好きな人と、温泉旅行に行ってみたい！
しかしいきなりだと、断られる…。

ですのでとりあえず、レベルを下げてみることにしました。

　温泉旅行に行く
⇒遠出をする
⇒デートをする
⇒食事をする
⇒お茶をする
⇒話をする

レベル、下げすぎだと思いました。
ローどころか、まさに地面を転がるボールです。

たぶん「話をする」でＯＫをもらったとしても、「話ができなくなったから、温泉旅行に」と誘ったとしても、120％断られる自信がありました。
しかしとりあえず、考えるより先にやってみることにしました。

ユウ「話、したいんだけど、いい？」

女性「イヤ」

最低ラインのボールすら断られました。
あらゆる意味で切なくなりつつも、あなたとお父様の幸せを心より願っております。

ゆうきゆう（精神科医・心理学者・作家・Ｍ）

特技は、たて笛のテストを口笛でごまかすこと。趣味はバンジージャンプ。落ちるときの情けない顔は天下一品。夢はワイルドブルーヨコハマの跡地を買い取って、セクシーピンクヨコハマにすること。読者数138000人のメルマガ「セクシー心理学」を運営している。アドレスはこちらhttp://sinri.net/

ニンテンドーＤＳから「心理研究家ゆうきゆう監修　マイニチココロビクス　ＤＳセラピー」も発売中。

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